白猫が自分の居場所を探して旅に出るようです。
今回の登場人物 | |
白猫 士元の愛猫。物静かで不愛想な猫らしい性質。品種の設定がテキトーだったばかりに、思わぬトラブルに巻き込まれる。 | |
黒猫 「黎明の東方」を制作した遊戯室担当エンジニア。遊戯室が制御不能に進化?したため、抜本的対策を迫られる羽目に。 | |
士元 本名は龐統。不愛想な白猫を慈悲深く養う閑人。人間の資質を洞察するように、猫の行動も正確に読むことができる。 | |
欠片 属性が近い覚者のそばで、彼らに保護されつつ守護している。それ以外の場所は危険すぎて近寄れない(波長が違いすぎて自壊してしまう)ので、結果的に一歩も外へ出られない。 | |
馬たち 馴致された馬はおっとりしていて従順な性質の者が多く、人間の主人を親のように慕っている。 | |
野良犬? 概して粗野で単細胞な連中とみなされており、たいがいの猫は彼らをまともに扱わない。 | |
絶影 曹操の愛馬。速力に長けた馬はそうでないものよりも感じやすく気が短い傾向にある。 | |
曹操 群雄割拠の混乱期にあって、もっとも急進的な改革者として行動したことが彼に覇権をもたらした。権力者には珍しくオープンで素直な一面も。 | |
許褚 主人の信頼篤い怪力ボディガード。一騎打ちなどの接近戦でとくに能力を発揮。 | |
周瑜 字名は公瑾。孫呉躍進の立役者筆頭。政治・戦略の手腕は当然として、芸術家で洒落者としても知られていた変わり者。 | |
孔明 本名は諸葛亮。原典の演義が彼に能力ブーストをかけたように、制作担当の黒猫は無属性の付与という禁じ手を打った。その煽りを受けて、近頃すっかり暇を持て余しているらしい。 | |
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馬 おや。 お出かけですか? | |
白猫 まあね。 | |
馬 いいですねえ。 今宵は、麗しい春の月夜です。 せいぜい楽しんできてください。 | |
白猫 そりゃ、どうも。 | |
馬 ……… | |
馬 うらやましい。 足音も足跡も残さず消えるなんて… | |
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士元 はははは。 今日は久々に大物が釣れたぞ! | |
士元 ───ん?? せっかくの大物だというに、 出迎えが出てこんな? | |
馬 ……おや。 まだ帰って来てないようですね。 | |
欠片 あの猫は遠出をしたようです。 しばらく帰ってこないでしょう。 | |
士元 なんだと。こんなご馳走つきの家を捨てて、 出て行ったのか。ばかなやつだ。 | |
馬 妙ですねえ。 どこへ行ってしまったんでしょう? | |
欠片 なんでも、自分の居場所を探すとかで。 | |
馬 ……ううむ、なんでしょうか、 そのどこかで聞いたようなセリフ。 | |
士元 そうか。 それなら、じきに帰ってくるだろう。 | |
欠片 はい。 私もそう思います。 | |
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白猫 いまごろ主人は、さぞ嘆いているだろう…… | |
白猫 ああ、ちょっと罪なことをしたかもしれん。 釣った魚を私にくれてやることが、 彼の唯一の愉しみだったからな…… そのほかは何もすることがなく、 生きる意味などないようなお人だった。 | |
白猫 ───さて。 そんなことはどうでもいいか。 | |
白猫 ここはいったいどのあたりだろう? ずいぶん北上してきたつもりだが…… | |
野良犬? こら、よそもの。 どっから流れて来たんだべや? いい毛皮をしてやがんなあ、こら。 | |
白猫 ああ、ちょうどよく柄の悪いのが来ましたね。 あんたなら、私の知りたいことを知っているでしょう。 | |
野良犬? なんだとう? おらはここ一帯のヌシだべや。 知らねえことなんぞ何もねえぞ、こら。 | |
白猫 ええ、そうでしょうとも。 ───私が探しているのは、 この大陸でもっとも俗悪な場所なんですがね。 あなたなら、当然ご存知でしょう? | |
野良犬? あー。 言ってる意味が、ちーとばかし分かんねえな? | |
白猫 それじゃ、言い換えましょう。 あなたの縄張りのなかで、 もっとも金と人が集まっている場所を教えてください。 | |
野良犬? おうっ! それなら、もちのロン! あそこしかねえべさ!!! | |
白猫 ……なるほど。 ここが丞相府ですか。 | |
……ヒュウウウウ…… | |
白猫 おお、背中がぞくぞくしてきましたよ! 新しい木材の匂い、 風が自在に渡っていくだだっ広さ、 そして意匠の趣味の悪さ…… | |
白猫 ああ、これこそ私が探し求めていた、 悪の総本山だあぁぁぁ!! | |
白猫 ───あっ、見回りがこっちへ来る! ここで捕まっては意味がない、 ここはいったん、 | |
絶影 わーい。 みんな、見て見てー\(^o^)/ 新しい | |
同僚(馬) うわー、きれいー(^o^) | |
同僚(馬) すごいねー。 そのじゃらじゃらは、 ぜんぶ | |
絶影 そうだよー♪ ああ〜、次の出陣がめっちゃ楽しみー! | |
白猫 ……なるほど。 これはいい目印を見つけました。 | |
同僚(馬) あ! | |
同僚(馬) 猫だ、猫! | |
絶影 ほんとだー。 猫だねー、初めて見たー。 | |
白猫 (まったく。 馬ってやつはどいつもこいつも、 頭の緩い連中ですな…) | |
白猫 いやいや。初めて見たのに、 私が猫だと判るなんて、あんたは賢いね。 さすがは曹操の馬だ。 | |
絶影 ふーん。 そうなのー? | |
白猫 そうですよ、よい馬はすべからく王者の持ち物ですからね。 しかしまぁ、なんて悪趣味な勒でしょう、 ああそれに、あの金細工の鞍ときたら! | |
絶影 あの鞍も、おろしたてなのさー。 はやくあの上に、ご主人さまを乗せてみたいなぁー! | |
白猫 ふむ、なるほど… 悪趣味ではあるが、実用的に作ってありますね。 さすがは音に聞こえた北方の騎馬軍のそれだ… ───おっと。いいところへ馬子が来ましたよ? | |
同僚(馬) あ! ご主人! | |
同僚(馬) ご主人!、ご主人! | |
絶影 わーい\(^o^)/ ご主人さまだー!!♪♪♪ | |
白猫 なんですって? あれが?? | |
許褚 ……… | |
絶影 ご主人! ご主人! みてみて! どう?! 似合ってる―――?(^_-)-☆ ガリガリガリ。 | |
許褚 ……? | |
白猫 ……はて? このうすのろな大男が、 曹操なのですか? | |
許褚 丞相… 猫が紛れ込んでいます。 | |
白猫 ああよかった、そりゃそうですよね、 こいつはやはり馬子に違いありません。 みるからに、知性のかけらも感じられない顔つきだ。 | |
曹操 うん? 変わった猫だな? | |
白猫 え、え? いやいやいや! だからって、このちびの痩せぎすがぁ?! | |
許褚 目障りな猫です、 捻っちまいましょう。 | |
白猫 くっ! ここまできて、お前ごとき雑魚に 捻られてたまるものか! ───それっ! | |
絶影 ご主人! ご主人ーーー!! | |
曹操 見てみろ、わしの馬に乗るとは大した奴だ。 ひと捻りにしてしまうには惜しい大物ではないか、 ははははは。 | |
白猫 ……ううむ。 これが、私の探していた大悪人なのですか… | |
白猫 そうだ。 見た目はちんけでも、中身は別ということもある。 しばらく様子を見るとしましょう… | |
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絶影 あーあー。 ここんとこずっと、おうちに籠りっきりだよぅ! つまんないなぁー。ガリガリガリ。 | |
同僚(馬) ご主人たち、みんなお留守らしいよ? なんでも、僕らより、 お船に乗るのにご執心なんだってさー。 | |
絶影 えーーー そんなのないよーー ガリガリガリ。 | |
同僚(馬) あー、影ちゃん。 そんなに前掻きばかりしてたら、 そのうち穴に埋まっちゃうよ! | |
絶影 だってえーーー! ガリガリガリ! ───おやぁ? | |
白猫 やあ、おちびさん。 今日はお別れを言いに来ましたよ。 | |
絶影 それは残念だなー! せっかくお友達になったのにー。 | |
白猫 私も残念ですよ。 あなたのご主人が、私の期待どおりだったなら、 いつまででもここに居るつもりでしたのに。 | |
絶影 えー。どうしてー? ご主人が悪いの―? | |
白猫 いいえ。 私が期待したほどの悪人ではなかったのです。 | |
絶影 うんんん? どゆことー? | |
白猫 つまりですね…… | |
曹操 よし! ここはひとつ知恵を貸してくれ! 物言いに遠慮はするな! | |
曹操 うん、うん。 ああ、それはもっともだな! そなたの言うとおりだ、考えを改めねばな! | |
曹操 なに! そうとは知らなんだ、 よくぞ忠告してくれた、礼を言うぞ! | |
白猫 ───と、いうような次第でして…… | |
白猫 彼は何かというと人にものを聞くのです。 そればかりか、愚かな独断を強いたり、 狭い裁量で非難することもほとんどない。 | |
絶影 それがだめなのー? | |
白猫 ええ、そうです。 あんな善人に用はありません。 ……まったく、こんなことなら、 長旅なんぞしなけりゃよかった。 | |
白猫 ───それじゃ。 | |
絶影 さよならー。 また遊びにおいでよー? | |
白猫 さて。 これからどうしたものか…… | |
黒猫 おや? ご同輩、こんなところでお会いするとは。 | |
白猫 おやおや。 田舎者にしては礼儀を知っていると思ったら、 保全監視員ではありませんか。 ───そうだ、あんたになら、 尋ねる価値があるでしょう。 | |
白猫 (……説明中……) | |
黒猫 ……… そうでしたか。 しかし、面白い願望ですね? | |
白猫 まあ、考えてみればそうですね。 悪人の、───しかもコソ泥やチンピラといった小物でなく、 大物悪人の膝の上で過ごしてみたいだなんて、 我ながら不思議な妄想を抱いたものです。 | |
黒猫 でも、それがために大河を渡ってくるのですから、 並大抵の欲求ではありませんね? | |
黒猫 ───いや。ちょっと待ってください。 もしかしたら、私が調査に来た歪みの出どころは、 あなたなのでは? | |
白猫 歪み? | |
黒猫 ええ。 例の騒動 >>註1 が起こって以降、珍しくはなくなったのですが。 かりに微小であっても、時空の歪みですからね、 調査しなくてはならないのです。 | |
白猫 というと、 私が時空を歪ませているというんですか? | |
黒猫 あなたの妄想イメージは、 このプログラム内には存在しようがないものです。 悪人の膝の上の白いペルシャ猫ってあなた、 それ | |
白猫 ??? なんです? ダブダブの風呂敷?? | |
黒猫 ほら。知らなくて当然です。 ブロフェルドというのはですね、 こことはまったく異なる世界線の、 しかも創作物の登場人物なのですよ。 | |
白猫 ほう。 それじゃ、その人物は、やはり悪人なのですか。 | |
黒猫 そうです。 世界征服という誇大な欲望を持った、悪の天才です。 そして、彼の愛猫が、白いペルシャ猫なのです。 | |
白猫 その悪の天才は、 もしかしてスキンヘッド? | |
黒猫 そうです! ああ、やっぱりあなたが原因でしたかっ!! | |
黒猫 きっと、イメージの混線のようなものが 起こったのでしょう。 ほら、こんな感じの。↓↓↓ あなたはこのイメージに感化されてしまったんです。 | |
白猫 ……そんなこと言われたってねえ。 問題は私の意志じゃなくて、 あんたの書いたプログラムでしょ? | |
白猫 だいたい、私を白いペルシャ猫なんかに設定したのが、 そもそもの間違いのもとなんじゃないですかね。 どうせテキトーに設定したんでしょう? この時代この土地にいたんですか、ペルシャ猫なんて? | |
黒猫 うっ。痛いところを突かれた… ま、まあ、紀元前の中東に居たことは確かですから、 地理的に流れ着いていてもおかしくは、ないですよ? | |
白猫 そうかもね。でも少なくとも、 これほど長毛でも鼻ぺちゃでもなかったでしょうね。 | |
黒猫 と、とにかく。 原因が分かったのですから、 もう妄想も収まったのではないですか? | |
白猫 いいえ、全然。 私は自然界の生き物としてプログラムされているんです。 そんな、スイッチひとつで1から0になったりしませんよ。 まったく。そんなことも知らずに シミュレーションシナリオなんぞ書いたんですか? 呆れ果てて言葉を失いますね。 | |
黒猫 ああ… そうですか… | |
白猫 というわけで、私は悪人探しの旅を続けますよ。 それともあんた、 いい悪人を知っているんなら、教えなさいよ。 | |
黒猫 う、うーん。 いい悪人、ですか。 そ、それじゃあ、……… | |
2- 真犯人登場? | |
白猫 ……まったく。 へっぽこシナリオライターのおかげで、 とんだ回り道をさせられたものです。 | |
白猫 で、ここが悪の根城ですか? ふむふむ。 急ごしらえの砦といった趣きだが、 なかなか殺気立っていて、 雰囲気は悪くないです。 | |
兵士 提督にご報告があります! 開門を! | |
白猫 おお、ちょうどいい。 あれにくっついて行きましょう。…… | |
周瑜 ───そうか。 ご苦労だったな、下がって休め。 | |
白猫 なんだ、いつも我が家の前の湖で舟遊びをしている、 すかした青二才じゃありませんか。 彼が、へっぽこの言ってた「いい悪人」? | |
兵士 提督もお休みになってください。 根を詰めてはお体に障ります。 | |
周瑜 ああ、ありがとう。 | |
白猫 あああ、ありがとうですって?! がぜん不安になってきましたよ(+_+)?? これはもう、 また無駄骨を折らされる予感しかしません! くそーぅ、あのへっぽこめぇ! | |
黒猫 呼びましたか? | |
白猫 なんですか急に! いるなら最初から出てきなさい!! | |
黒猫 すみません。 なにせ私、遍在しているもので。 それであの、 また思い違いをしておられるようなので、 ご説明をと思いまして。 | |
白猫 またそうやって、人のせいにする!! 見てみなさい、あれが悪人に見えますか? 部下を気遣ったりなんかして! どうせ猫しか見ていないんだから、 見栄を張る必要もないのに! | |
黒猫 もともと彼はですね、 考えていることはまともで、性悪なのが という程度の悪人だったのです。 それがどうやら、性悪でもなくなっているようだ。 うーん。これほど症状が進んでいるとは、 思いもよりませんでした… | |
白猫 症状ですって? あんた、私を病人呼ばわりする気?! | |
黒猫 まあ、ある意味ではね? 明らかなバグですから。 | |
白猫 きーーーー!!! 誰が書いたバグだって話でしょうに!!! | |
周瑜 気のせいかな? 赤子の声がするが… | |
黒猫 ……… | |
白猫 ………んぐぐ。 | |
周瑜 ───さて。もう日が暮れたか。 客人のご機嫌を取りに行かねば。 | |
白猫 お。ご主人候補は出かけるようですな。 とりあえずついて行きますか… | |
孔明 おや、公瑾どの。 毎日ご苦労さまですね。 | |
白猫 ん? もしかして、あれが私の探していた、 理想のご主人さまでしょうか? | |
黒猫 そう見えますか? | |
白猫 あの落ち着き様、間違いなく大物です。 まるで害のなさそうな顔をしているが、 それも巧妙なカモフラージュかも知れません! うひゃー、なんだかわくわくしてきましたよ?! | |
孔明 閑人のお相手をしてくださるのはありがたいが、 あなたは多忙な身だ、ほかに障りが出ては困ります。 | |
周瑜 そうはいかない、先生は大事なお客様だ。 なにしろ孫劉同盟の 折衝については子敬どのがお相手をするでしょうから、 私からはなにも口出しはしません。 そのかわり、毎日顔色を窺いに参りますので、 どうかしばらくのご辛抱を。 | |
白猫 見なさい、周瑜は完全に彼を畏怖していますよ。 きっと、本当は悪人だと知っているんです。 でも逆らえないから、 ああやって | |
黒猫 思ったとおりだ、まるで敵意が感じられない。 いやー、事態は深刻ですぞ? | |
白猫 なにが? | |
黒猫 彼らが仲睦まじいのは非常にまずい。 どこかで衝突が起こらないと、 お話がドッチラケになってしまう。 | |
黒猫 ───いやいや、そんな程度では済まされない、 これはそもそも戦争のお話なんだから、 お話じたいが崩壊してしまうんです! | |
白猫 そういえば、旅の道中は至って平和でしたね。 こんなにのどかでいいのかと思うくらいに。 でも、シナリオの不出来は書き手の落ち度でしょ? あなたがちゃんと書き直せばいいことです。 | |
黒猫 それが出来れば苦労はしませんよ。 いいですか、この3次元仮想現実遊戯室では、 動的なシナリオしか動かないのです。 お話の行方を書き手が決めることはできません。 できることは、大筋の材料を最初に投入することと、 微細なアルゴリズムの調整だけなんです。 | |
白猫 それじゃ、材料とアルゴリズムが拙かったんでしょう。 古代中国にペルシャ猫を放り込んでいる時点で、 何をか言わんやです。 | |
黒猫 いや、そういう些末なことはいいんです。 この二人の関係はそうはいきません。 シナリオの根幹なんです。 とにかく険悪になってもらわないと、困るんですよ! >>註2 | |
白猫 些末? この私が? やっぱりテキトーな設定だったんじゃないですか! おのれへっぽこライター、ただじゃおきませんよ! | |
周瑜 ……はて。妙だな? ここでも赤子の声が聞こえる… | |
孔明 まさか。 きっとお疲れなのですよ、 戻ってお休みにならないと。 | |
周瑜 う、うん、そうかも知れない。 それじゃ先生、失礼します。 | |
白猫 ……ああ、助かった。 またも見つからずに済んだようです。 | |
孔明 いいえ、先刻承知ですよ。 隠れていないで出てきなさい。 | |
白猫 なんですと?!☆彡( ゚Д゚) | |
孔明 なに、捻り殺したりしませんから大丈夫です。 | |
孔明 ご覧の通り暇を持て余しているんですよ、 少し相手をしてくださいな。 ───保全監視員さん。 | |
黒猫 なんと…。 | |
白猫 ほほほ、これは面白い。 またしてもバグが発覚したようですな? それとも、猫と話せる超テキトー設定ですかな? | |
黒猫 ううむ。どうやら、 彼のチート設定が誤作動しているようです。 | |
孔明 ええ。 もっと具体的に言うと、 あなたが私に無属性を付与したのが原因ですね。 この属性にはあらゆる制約を無に帰す性質がありまして、 結果的に「なんでもあり」の状況を引き起こすんです。 | |
白猫 うわ、それはひどい。 | |
黒猫 くっ… やはり、シナリオ内と言えども、 外界を覆う趨勢─── | |
孔明 紙やディスクに書いたわけじゃありませんからね。 あなただって、いまさらそんな古代技術で シナリオを書こうとは思わないでしょう? | |
黒猫 それじゃ、修復は不可能だと? | |
孔明 問題は技術レベルには存在していません。むしろ、 問題をどう定義するかが問題というべきでしょう。 おわかりですか? あなたがそれを問題だと定義するなら それは問題になりうるけれども、 そうでないなら、その限りではないということです。 | |
黒猫 なるほどね、そりゃそうだ… ……って、自分の作ったキャラクターに 説教されて納得しちゃってるし。 ははは、なんとわかりやすい | |
黒猫 そうだ、別の監視員の報告に似た事例があったぞ? (……該当データ参照中……) ふむふむ。なるほどね、バルドルか。 このクラスの調停者が相手では、 私の見識などかなうはずもない… | |
白猫 よく分かりませんが論破されたみたいですね? いい気味だ。 ちょっとあなた、そんなのはどうでもいいんです。 あなたが本物のチートなら、 私の問題を解消して見せてもらえませんか? | |
孔明 ああ、悪人を探しておられるのですね? | |
白猫 うむ、話が速くて助かります。 私はこのへっぽこのせいで、 さんざん振り回されてきたんです。 もういい加減に、けりをつけてもらいたいんですよ!! | |
孔明 なるほど、わかりました。 けりをつける方法はありますよ。 | |
白猫 まあ、そうでしょうね。 あなたは「なんでもあり」なんだし。 | |
白猫 それじゃひとつお願いしますよ。 私のお眼鏡にかなう「大物悪人」を呼び出して下さい。 あなたがそうだというならなお結構。 その膝の上へ乗せて、ひと撫でしてくれれば、 それで万事解決なんです。簡単でしょ?! | |
孔明 いや、それは無理です。 | |
白猫 ええ?! なんで?!! | |
孔明 そういう具体例を顕在化するのは無理なんですよ。 私ができるのは、それ以外の迂回策を採って、 とにかく何でもいいからけりをつけることだけです。 | |
黒猫 ま、要するに、 ごまかしてうやむやにするわけです。 | |
孔明 そうそう。 たとえばあなたの妄想に別の妄想を上書きして、 ブロフェルドに対する欲求を消去するとかね。 | |
白猫 やだやだやだ! 膝の上でゴロゴロしたいんだ! 大物悪人でなきゃイヤなんだ!! | |
孔明 だめです。 | |
白猫 なんで!!! | |
孔明 悪人はもう存在しません。 | |
白猫 そんなばかな!! | |
孔明 論より証拠、あなたが体験してきた結果が、 その答えになっているでしょうに。 | |
白猫 うそだ!!! 私の知らないところにいるはずだ! | |
孔明 それじゃ死ぬまで探し続けてごらんなさい。 きっと絶望するでしょうから。 | |
白猫 きーーー、えらそうに! なんでそんな断言できるの?!! | |
孔明 悪人を組成して維持するだけの環境がないのですよ。 放っておいても自壊する原子核みたいに、 作り出したそばから崩壊してしまうんです。 | |
白猫 ゲンシカクってなんです、三角もあるんですか? さては専門用語で煙に巻こうという腹ですな? | |
孔明 お望みとあらば長々と説明しますよ。 聞く気がないなら閉じておいてください。
原子はこの世界の組成材料です。
最小単位の基本原料ですから目には見えません。 原子の崩壊といっても観測側の誤認であって、 実際は変化の過程を断片的に見ているんです。 原子が変化するから、世界が千変万化するわけで。 しかもこの変化は整然たる秩序を持っていて、 起点と収束点はあらかじめ決められており、 さらにその中間点に飽和点が定められています。 ここで何が飽和するかというと、歪みなんですね。 そもそも世界は歪むことを目的に始まったもので、 歪みきるまで歪んでしまえば、あとは元の姿に戻るほかない。 そうなると、一転して歪みは不要なもの───悪に変わる。 飽和点を それはもはや存在すらも許されないのです。 これらの変化はまったくひとりでに進んでいきます。 我々のちっぽけな感覚器官や不完全な概念では、 制御どころか観測もおぼつかない次元でね。 まぁ、歴史を長くつぶさに顧みて、 その微細かつ壮大な兆候に気付く者がわずかにあれば、 それこそ人類の幸運というものですよ。 ───で、話を戻しますが… 無属性存在の組成維持が可能になります。 ええ、かつては私のほうが崩壊していたんですよ。 つまり逆転現象が起こっているんですね。 | |
黒猫 悪は正義に駆逐されるんじゃなくて、 はじめから自壊するよう作られたんです。 それで、曹操も周瑜もあのザマだったわけですな。 ……とするとですよ? もはや董卓も張角も存在しないかもしれませんね? >>註3 なんと恐ろしい、…いや平和な世界でしょうか。 | |
孔明 そんなところでしょうね。 くだんのブロフェルドも、 存在が崩壊しているに違いありません。 | |
黒猫 ええ。 図解するとこんな感じでしょう↓↓↓ | |
白猫 ………( ゚Д゚) | |
孔明 いいですか、気絶なんかしてないで、 よく聞いてください? さきほども申し上げました通り、 本人が問題だと思うから問題になるんです。 あなたの問題は、その欲求を遂げられない状況にある。 だったら、それを放棄しなさい。 それがいちばん簡単な解決策です。 | |
白猫 (゚Д゚≡゚Д゚)……?! | |
孔明 さもなくば、 何者かになりたいなどとはもう思わないことです。 偶像ごっこに興じていられるのも、 歪みが完全に正されるまでの、 わずかな猶予にすぎません。 | |
白猫 や… やだーーー!!! 私が悪いわけじゃないんだから、 不条理を押し付けるなーーー!! | |
黒猫 だから不条理じゃないって言ってるのに… | |
白猫 なんですってーーー!! 元凶のくせに、 どの口がそんな言葉をほざくんです?! 私の夢を返せ! 私のブロフェルドを返せえええええ!! | |
黒猫 わーーーΣ(・ω・ノ)ノ! ペルシャ猫の本気はやばいです! 体格的にひとたまりもありませんっ! | |
孔明 どうします? とりあえず危険回避しますか? | |
黒猫 あああ、この際なんでもいいからお願いします、 もうあなたに任せる以外手がありませんっ! | |
孔明 そうですか… もう少し付き合っていただきたかったのですが、 仕方ありませんね。 いやはや、こうやって問題を打ち消してしまうと、 そのたびに私が退屈になるわけですよ。 これも一つの問題なんでしょうね、あははは。 | |
黒猫 なんでもいいから!!! はやくなんとかしてっ!!! | |
孔明 はいはい。 それじゃ。─── | |
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士元 はははは。 どうだ見てみろ、久々のご馳走だろう! | |
白猫 わーーーい\(^o^)/ いただきまーーっす! | |
士元 よしよし、たんと食え。 やはりお前がおらんと、 張り合いがなくていかん。 | |
馬 ……いやはや、さすがですね。 あなたとご主人の言ったとおり、 しれっと帰ってきたじゃありませんか。 | |
欠片 そうですね。 ものごとは必ず収束しますから。 | |
白猫 がつがつがつ! ばりばりばり! | |
欠片 どうやら彼は今回、 私の同朋のとあるご主人の、 暇つぶしに巻き込まれたらしいです。 | |
馬 おやおや。 なにやら陰謀めいた話ですね? 世の中には悪い人がいるものだ… | |
士元 おまえ、なんだか食い方があさましくなったのう? | |
白猫 ばりばりばり… | |
士元 それに毛玉に覆われていまいち判らんが、 だいぶやつれたようだ。 さぞ苦労したんだろう、可哀相に。 | |
白猫 ……… | |
白猫 ! うわあああーーーん(>_<)! ご主人ごめんなさーーい! もうどんな妄想に駆られても、 ここを出て行ったりしませんからあぁぁぁ!! | |
〜〜おしまい〜〜 |
【註釈】
1 例の騒動
2 孔明と周瑜
3 董卓と張角 |