最終更新日*2018/03/12*挿絵を追加

回想録

登場人物たちがあれこれ思い出を語ります。


第1話「ノールがやって来た★」

試練の孤島での冒険が終わり、一人故郷に帰ったノール。今日は、かつての仲間たちに嬉しい報告をするために、はるばるオレアルの島へとやってきたのです。


今回の登場人物

ノール
基本の属性攻撃をすべて使いこなす万能魔術師。試練の孤島でオレアルと偶然出会い、ともに苦難を乗り越えて親友になった。
オレアル
主人公。小さな島の領主の息子。試練の孤島で闇魔法を習得した。故郷へ戻ってからも、相変わらず冒険や決闘に明け暮れている。
ティル
試練の孤島で代々神官を勤めた一族の末裔。オレアルと出会って冒険心に火が付き、島を飛び出してしまった。
ソル
島の北端にある剣峰に封じられていた雷神を開放したところ、どういうわけかこの男が仲間になった。

オレアルの最初の妻。冒険好きな夫を健気に見守っている。
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ノール
やあ! お久しぶりです、みんな!!
ティル
お?! こいつはたまげたぜ!
誰かと思えば、ノールじゃないか?!
ノール
元気そうですね、ティル。
故郷が恋しくありませんか?
ティル
ああ? 故郷?
あの島のことか?
せっかく忘れてたのに、思い出させるんじゃねえよ!
ノール
あはは、そうですか。
相変わらずですね、君は。
ソル
ノールだと?……
知らんな。知り合いか?
ノール
ああ、ええと。
君とは、一緒に行動する時間が少なかったですね、ソル。
ソル
…………。
ああ、思い出したぞ。
ティル
本当か、ソル。
ソル
うむ。
やつの妹に見とれるお前の顔は、
いまでもよく覚えているぞ、ティル。
ティル
み、見とれてなんかいないぞ!
つまらん嘘を言うなっ!!
オレアル
そうだな。見とれるというよりは、
むしろ奇異の目で見ていたな。
ノール
ん?
ノール
……き、奇異の目?
ど、どういうことでしょうか、それは?
ソル
とぼけるな。
妹を、まるで妻のように扱っていたろうが。
ノール
え…
ソル
この俺でさえ驚いたのだ、
田舎者のティルにはどれほどのショックだったか。
ティル
田舎者ってなんだよ!
関係ないだろ、そんなの!
オレアル
むしろ未開の土地にこそ残ってるんじゃないのか、
ああいう風習は。
ティル
残ってるわけないだろ!
───いやちげーよ! 未開の地とかいうなよ!
ティル
だいだい、この島だって、似たようなもんじゃないか。
オレアル
我々は異血を尊ぶ民であり、
その点でじゅうぶん文明的だよ。
なぜなら、古いけものほど、
近縁の交配による弊害が少ないことは明らかだからだ。
ノール
ちょっと待ってください。
僕をケモノ呼ばわりする気ですか?
オレアル
古い人種は、獣により近いと言えるだろう。
ノール
うーん。
それはどうかと。
ノール
僕の一族の起源が君たちより古いかどうかはともかく、
僕らは君たちほど、四六時中戦争ばかりしていませんよ。
オレアル
ふん。
オレアル
あんたたちはおそらく、単純な欲望が起こす争いと、
戦略にもとづいた組織的戦争を一緒くたにしているんだろう。
ノール
はあ。
違うんでしょうか?
オレアル
我々が戦うのは、発展のためだ。
ただじっとしていたって、何も新しいことは起きないからな。
ソル
まったくだ。
ティル
そりゃそうだぜ。
だけどノール、お前だって、武術修行のために
試練の孤島に来たんじゃなかったのか?
ノール
まぁ、そうですね。
僕は、そちら方面の資質にはてんで欠けているので。
ノール
君たちが一緒にいてくれなかったら、
生きて帰ることもできなかったでしょう。
オレアル
うむ。なかなか厳しい修行だったな。
俺だって、お前さんの魔法にはずいぶん助けられた。
オレアル
それで?
修行の成果は、出ているのか?
ノール
さあ、どうでしょうか。
何しろ僕の故郷はのんびりしたところですから。
ソル
妹は息災か?
ノール
ええ、おかげさまで。
君たちにもとても会いたがってますよ。
夫の命の恩人だと言ってね。
ティル
そうか、そりゃよかったぜ……
ティル
………いやまて。
いまなんて言った?
ノール
ええ、ですから、とても感謝しているんです。
ぜひ会ってお礼がしたいと……
ティル
そうじゃねえ。
何の、恩人だって?
ノール
はあ、それは僕、
つまり兄であり夫の……
ティル
…………
ノール
ええと。
それじゃ、もう言ってしまいましょうか。
ティル
いや、いや、言うな。
言わなくてもわかってる。
ノール
あれ?
そうなんですか?
ティル
そうだ。
だから俺も、金輪際こんりんざいお前と話をする気はないっ!
ノール
え?
ソル
出て行ったぞ。
オレアル
顔面蒼白だったな。
ノール
かわいそうに。
具合が悪かったんですか?
オレアル
さあ?
オレアル
ところで、話が途中になったな。
ノール
え?
あ、ああ、僕の話ですか?
ノール
それはですね、こういうことです。
つまり僕と妹の婚儀のうたげに、
皆さんを招待したいのです!
オレアル
そうか。
ソル
ううむ。
ノール
…………
ノール
(あ、あれ? そんな反応ですか?)
ノール
(ううむ。
やはり、兄妹で夫婦になるのがそんなに不評ですか……)
ソル
おい。
ノール
は、はい?
ソル
その宴とやらは、あの舞踏会とかいう、
愚にもつかない催しではないだろうな。
ノール
ああ、ダンスですね、
それも多少あるでしょうけど…
ソル
食事はどうだ?
少なくとも、牛10頭くらいはほふるんだろうな?
ノール
え…
ソル
なんだ?
牛ではなくヤギか?
ふん、しょぼくれてるな!
ノール
あ、あの…
オレアル
俺も、あちこちから決闘を申し込まれるし、
紛争やら探索やらで忙しい身でな。

ま、暇ができたら考えよう。
ノール
え…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


あら、お帰りでございますか?

え?
無駄足…?

そうですか、
ご用件が期待外れだったことは残念ですわ。
でも……

夫はあなたがいらっしゃるのを、
とても楽しみにしていたのです。
名付け親がやってくると言って…
ノール
は…
ノール
そ、それは本当ですか?
僕が名前を付けてあげた時、
彼はあまり気が進まない様子だったので、
てっきり余計なことをしたとばかり……

いいえ、そんなことはありません。

夫はあなたを尊敬しているのです。
自分の知らないものを持っている人に、
彼はとても惹かれるんです。
ノール
そ、そうだったんですか……
ノール
それじゃ、婚儀の宴に出てくれるよう、
もう少し粘ってみようかな。
説得の仕方によっては、気が変わるかも……

あら、それは無理ですわ。
ノール
へ?

決闘と婚儀じゃ、はかりにかけるまでもなく、
決闘を取るでしょう。
ノール
な、なるほど……

あら。
がっかりしないでくださいな。
ノール
へ?

な、なにか手があるんでしょうか?

夫を誘いたいなら、
決闘を申し込めばよいのです!
ノール
!!
じょ、冗談はよしてください!
ノール
やはりあなたがたとは文明の程度が違いすぎる!
おめでたい婚儀より野蛮な決闘が大事だなんて、
僕には到底理解できません!!
ノール
もう、帰りますっ!!
オレアル
ん?
やつは帰ったのか。
ティル
やれやれだぜ。
ソル
いったい何しに来たんだ。

怒らせてしまったわ…
いったい何がいけなかったのかしら?
〜〜おしまい〜〜



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