試練の孤島での冒険が終わり、一人故郷に帰ったノール。今日は、かつての仲間たちに嬉しい報告をするために、はるばるオレアルの島へとやってきたのです。
今回の登場人物 | |
ノール 基本の属性攻撃をすべて使いこなす万能魔術師。試練の孤島でオレアルと偶然出会い、ともに苦難を乗り越えて親友になった。 | |
オレアル 主人公。小さな島の領主の息子。試練の孤島で闇魔法を習得した。故郷へ戻ってからも、相変わらず冒険や決闘に明け暮れている。 | |
ティル 試練の孤島で代々神官を勤めた一族の末裔。オレアルと出会って冒険心に火が付き、島を飛び出してしまった。 | |
ソル 島の北端にある剣峰に封じられていた雷神を開放したところ、どういうわけかこの男が仲間になった。 | |
妃 オレアルの最初の妻。冒険好きな夫を健気に見守っている。 | |
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ノール やあ! お久しぶりです、みんな!! | |
ティル お?! こいつはたまげたぜ! 誰かと思えば、ノールじゃないか?! | |
ノール 元気そうですね、ティル。 故郷が恋しくありませんか? | |
ティル ああ? 故郷? あの島のことか? せっかく忘れてたのに、思い出させるんじゃねえよ! | |
ノール あはは、そうですか。 相変わらずですね、君は。 | |
ソル ノールだと?…… 知らんな。知り合いか? | |
ノール ああ、ええと。 君とは、一緒に行動する時間が少なかったですね、ソル。 | |
ソル …………。 ああ、思い出したぞ。 | |
ティル 本当か、ソル。 | |
ソル うむ。 やつの妹に見とれるお前の顔は、 いまでもよく覚えているぞ、ティル。 | |
ティル み、見とれてなんかいないぞ! つまらん嘘を言うなっ!! | |
オレアル そうだな。見とれるというよりは、 むしろ奇異の目で見ていたな。 | |
ノール ん? | |
ノール ……き、奇異の目? ど、どういうことでしょうか、それは? | |
ソル とぼけるな。 妹を、まるで妻のように扱っていたろうが。 | |
ノール え… | |
ソル この俺でさえ驚いたのだ、 田舎者のティルにはどれほどのショックだったか。 | |
ティル 田舎者ってなんだよ! 関係ないだろ、そんなの! | |
オレアル むしろ未開の土地にこそ残ってるんじゃないのか、 ああいう風習は。 | |
ティル 残ってるわけないだろ! ───いやちげーよ! 未開の地とかいうなよ! | |
ティル だいだい、この島だって、似たようなもんじゃないか。 | |
オレアル 我々は異血を尊ぶ民であり、 その点でじゅうぶん文明的だよ。 なぜなら、古い 近縁の交配による弊害が少ないことは明らかだからだ。 | |
ノール ちょっと待ってください。 僕をケモノ呼ばわりする気ですか? | |
オレアル 古い人種は、獣により近いと言えるだろう。 | |
ノール うーん。 それはどうかと。 | |
ノール 僕の一族の起源が君たちより古いかどうかはともかく、 僕らは君たちほど、四六時中戦争ばかりしていませんよ。 | |
オレアル ふん。 | |
オレアル あんたたちはおそらく、単純な欲望が起こす争いと、 戦略にもとづいた組織的戦争を一緒くたにしているんだろう。 | |
ノール はあ。 違うんでしょうか? | |
オレアル 我々が戦うのは、発展のためだ。 ただじっとしていたって、何も新しいことは起きないからな。 | |
ソル まったくだ。 | |
ティル そりゃそうだぜ。 だけどノール、お前だって、武術修行のために 試練の孤島に来たんじゃなかったのか? | |
ノール まぁ、そうですね。 僕は、そちら方面の資質にはてんで欠けているので。 | |
ノール 君たちが一緒にいてくれなかったら、 生きて帰ることもできなかったでしょう。 | |
オレアル うむ。なかなか厳しい修行だったな。 俺だって、お前さんの魔法にはずいぶん助けられた。 | |
オレアル それで? 修行の成果は、出ているのか? | |
ノール さあ、どうでしょうか。 何しろ僕の故郷はのんびりしたところですから。 | |
ソル 妹は息災か? | |
ノール ええ、おかげさまで。 君たちにもとても会いたがってますよ。 夫の命の恩人だと言ってね。 | |
ティル そうか、そりゃよかったぜ…… | |
ティル ………いやまて。 いまなんて言った? | |
ノール ええ、ですから、とても感謝しているんです。 ぜひ会ってお礼がしたいと…… | |
ティル そうじゃねえ。 何の、恩人だって? | |
ノール はあ、それは僕、 つまり兄であり夫の…… | |
ティル ………… | |
ノール ええと。 それじゃ、もう言ってしまいましょうか。 | |
ティル いや、いや、言うな。 言わなくてもわかってる。 | |
ノール あれ? そうなんですか? | |
ティル そうだ。 だから俺も、 | |
ノール え? | |
ソル 出て行ったぞ。 | |
オレアル 顔面蒼白だったな。 | |
ノール かわいそうに。 具合が悪かったんですか? | |
オレアル さあ? | |
オレアル ところで、話が途中になったな。 | |
ノール え? あ、ああ、僕の話ですか? | |
ノール それはですね、こういうことです。 つまり僕と妹の婚儀の 皆さんを招待したいのです! | |
オレアル そうか。 | |
ソル ううむ。 | |
ノール ………… | |
ノール (あ、あれ? そんな反応ですか?) | |
ノール (ううむ。 やはり、兄妹で夫婦になるのがそんなに不評ですか……) | |
ソル おい。 | |
ノール は、はい? | |
ソル その宴とやらは、あの舞踏会とかいう、 愚にもつかない催しではないだろうな。 | |
ノール ああ、ダンスですね、 それも多少あるでしょうけど… | |
ソル 食事はどうだ? 少なくとも、牛10頭くらいは | |
ノール え… | |
ソル なんだ? 牛ではなくヤギか? ふん、しょぼくれてるな! | |
ノール あ、あの… | |
オレアル 俺も、あちこちから決闘を申し込まれるし、 紛争やら探索やらで忙しい身でな。 ま、暇ができたら考えよう。 | |
ノール え… | |
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妃 あら、お帰りでございますか? | |
妃 え? 無駄足…? | |
妃 そうですか、 ご用件が期待外れだったことは残念ですわ。 でも…… | |
妃 夫はあなたがいらっしゃるのを、 とても楽しみにしていたのです。 名付け親がやってくると言って… | |
ノール は… | |
ノール そ、それは本当ですか? 僕が名前を付けてあげた時、 彼はあまり気が進まない様子だったので、 てっきり余計なことをしたとばかり…… | |
妃 いいえ、そんなことはありません。 | |
妃 夫はあなたを尊敬しているのです。 自分の知らないものを持っている人に、 彼はとても惹かれるんです。 | |
ノール そ、そうだったんですか…… | |
ノール それじゃ、婚儀の宴に出てくれるよう、 もう少し粘ってみようかな。 説得の仕方によっては、気が変わるかも…… | |
妃 あら、それは無理ですわ。 | |
ノール へ? | |
妃 決闘と婚儀じゃ、はかりにかけるまでもなく、 決闘を取るでしょう。 | |
ノール な、なるほど…… | |
妃 あら。 がっかりしないでくださいな。 | |
ノール へ? な、なにか手があるんでしょうか? | |
妃 夫を誘いたいなら、 決闘を申し込めばよいのです! | |
ノール !! じょ、冗談はよしてください! | |
ノール やはりあなたがたとは文明の程度が違いすぎる! おめでたい婚儀より野蛮な決闘が大事だなんて、 僕には到底理解できません!! | |
ノール もう、帰りますっ!! | |
オレアル ん? やつは帰ったのか。 | |
ティル やれやれだぜ。 | |
ソル いったい何しに来たんだ。 | |
妃 怒らせてしまったわ… いったい何がいけなかったのかしら? | |
〜〜おしまい〜〜 |